2009年11月23日

歴史的楽器展示室更新

■ Sudre - Halari Saxhorn Basse ca.1900 - 1950
  http://historical-euphonium.seesaa.net/article/133731387.html

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 Sudre のサクソルンバッセです。アーバン補正ヴァルヴを採用してゐます。

■ Couesnon & Cie Saxhorn Basse Monopole - Concervatoire No.210 encadre´s ca.1934
  http://historical-euphonium.seesaa.net/article/129931773.html

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 ケノンのサクソルンバッセです。長い管の取り回しが見事です。
 
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2009年11月05日

「カラー図解 楽器から見る吹奏楽の世界」發刊

 待望の佐伯茂樹氏による新しい吹奏樂の本が、河出書房新社より出版されました。

  suisougakunosekai.jpg
  カラー図解 楽器から見る吹奏楽の世界 ← クリックで注文できます。

 これまで「樂器」「樂曲」「編成」は、別々の文献に頼らなければならなかったのですが、どうもそれらの整合性がなく、てんでに勝手な見解を書いたり、アドヴァイザーの意見を鵜呑みにしてゐるやうな書が多かったやうに思ひます。

 この本は、佐伯氏一人で書かれたもので、巷によくあるやうな「著者は一人、アドヴァイザーは樂器の數」といふ本とは違ひ、主張が一貫してゐるので、資料として大變貴重だと思ひました。このやうな本は、これまでありさうでなかったですね。

 一見似たやうな本が、次々に刊行されてをりますが、どれも「正確さ」に欠けてゐるものばかりといふ印象でした。これからも、その傾向に變りはないと思ひます。こんな状況だからこそ、佐伯氏の本のやうな「質」が大事だと思ひます。

 このやうな畫期的な本に、私の所有する樂器を、資料として多數掲載していただけたことを光榮に思ってをります。

 表紙にサテンシルバーのユーフォニアムが載ってゐる本など、なかなかないですよね(このやうな調子で、マニア心をくすぐる一冊でもあります)。
 
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2009年11月04日

中共のユーフォニアムの歴史 その2

 ところが、近年は、ロータリー式の樂器を用ゐず、ユーフォニアムが用ゐられてるやうである。

 本年(平成21年 西暦2009年)は、中共建國60周年にあたり、國家元首を前に、全軍が集結する大閲兵が執り行はれた。その模様の映像資料を見ると、陸海空の全軍でユーフォニアムが使用されてゐるのが確認できる(2枚目の鮮明な映像資料を手配中)。

  2009.png  2009-02.png
  「建国六十周年 共和国十四次大閲兵」(2009年 CCTV中国中央電視台製作)

 マウスパイプの形状からして、YAMAHA YEP-642を元にした、中共製の樂器のやうに見える。

 1949年の第一次大閲兵から辿ってみると、ピストン式からロータリー式、そしてピストン式へと移り變ってきたことが確認できる。

  1949-01.png  1949-02.png
  1949年の映像から
 「共和国歴次大閲兵」2005年 中国人民解放軍映像出版社

  1955.png
  1955年(第一次臺灣海峡危機當時)の映像から
 「共和国歴次大閲兵」2005年 中国人民解放軍映像出版社

 以上の資料ではピストン式のユーフォニアムやバリトン、アルトホルンなどが採用されてゐたことが確認できる。

 なほ、この後の1956年(中ソ對立の發端となった、ソ聯共産党黨第20回大會が開催された年)の第八次大閲兵では、中低音樂器については映像確認できないが、ロータリー式のトランペットが採用されてゐることが確認できた。

 前回(1999年)の第十三次大閲兵では、ロータリー式のテノールホルン、或はドイツ式バリトンと見られる樂器が用ゐられてゐるのが、確認できる。

  1999.png
  1999年 第十三次大閲兵の映像から
 「世紀大閲兵」2001年 中国三環音像社

 未だ詳細は不明だが、ざっと、このやうな動きがあったのではないかと推察してゐる。

【建國當初の1949年〜1955年】ピストン式の円錐管同族樂器が採用され、次中音號(バリトン)、上低音號(小バス・ユーフォニアム)が用ゐられた。

【1956年以降、極く近年まで】ロータリー式の樂器が採用され、次中音號(テノールホルン)、上低音號(ドイツ式バリトン)が用ゐられた。

【2009年現在】次中音號に相當する樂器はなくなり、上低音號としてユーフォニアムが採用された。
 
 今後もさらなる情報を得たい。

 なほ、蒋介石の國民黨軍による中華民國(臺灣)については、中共とは別の政府により建國された國であり(日本政府は「國家」としては認めてゐない)、軍組織も異なるため、吹奏樂の編成も、別の道を辿ってきたものと思はれる。
 
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中共のユーフォニアムの歴史 その1

 中華人民共和國(中華民國臺灣ではなく、毛沢東により1949年に打ち立てられた共産主義國家。以下「中共」と記す)のユーフォニアムについて、觸れてみたい。

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  比長安編著「次中音号上低音号演奏実用教程」(2001年 中国青年出版社)

 ユーフォニアムの名稱は「上低音號」で、日本で言ふところの「小バス」に近いニュアンスである。ピストン式(ユーフォニアム)、ロータリー式(ドイツ式バリトン)による名稱の區別はない。

 なほ、サクソルン式のバリトンについては「次中音號」と稱されてゐる。これもピストン式(バリトン)、ロータリー式(テノールホルン)による名稱の區別はない。

 上海音樂學校近邊の樂譜店で、教則本を探したところ、次の二冊が見つかった。いづれも、中國人民解放軍軍樂團の教官が記したもののやうである。

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  比長安編著「次中音号上低音号演奏実用教程」(2001年 中国青年出版社)

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  姜永強編著「次中音号初級教程」(2002年 同心出版社)

 上低音號、次中音號共通の教則本が用ゐられてをり、記譜はin B♭のト音記號である。なほ、兩者の寫眞を見ると、使用の樂器が中共製ではなく、ミラフォンのドイツ式バリトン(ロータリーヴァルヴ)のやうだ。
 
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2009年08月06日

「歴史的樂器展示室」リニューアル

 「歴史的樂器展示室」をブログ形式にリニューアルしました。
 http://historical-euphonium.seesaa.net/

 HTMLに比べて更新がしやすいので助かります。新しい發見や、調査して判ったことなど、今後も更新していきたいと思ひます。

 樂器も、イヴェントなどで、直接お見せしたいものが大分増えてきました。
 
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2009年07月14日

世にも珍しいテナーホーン(アルトホルン)フェア開催中!

 どの楽器屋に行っても、なかなか置いていないテナーホーン(アルトホルン)。中古はさらに見つかりません。Saxhorn Depot では、どうせなら「よそにない物」をご提供してみたいと思い、連日徹夜して、ズラッと取り揃えました。題して「世にも珍しいテナーホーン(アルトホルン)フェア」です。

 すべて売れたらお終いの一点物です。どなた様もボヤボヤして買い逃しのないよう、じっくりご覧下さいませ。

■ COURTOIS TH09004
http://saxhorn.seesaa.net/article/123438703.html
(Yahoo! オークション出品中です こちらをクリック

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■ BESSON BE950-2 SOVEREIGN TH09002
http://saxhorn.seesaa.net/article/123421953.html

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■ BOOSEY & HAWKES 9502 SOVEREIGN
http://saxhorn.seesaa.net/article/123423048.html

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■ ALTHORN AMATI
http://saxhorn.seesaa.net/article/123424317.html

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2009年06月10日

管楽器の資料

 いくつか貴重な資料を入手できました。

langwill.jpg

The New Langwill Index
William Waterhouse, Tony Bingham 1993
ISBN-0-946113-04-1

 ヨーロッパの管楽器メーカーの名鑑。年代・歴史の他、發明した樂器や博覧會等の出品履歴などが掲載されてゐる。長年欲しかった資料。


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HISTORIC MUSICAL INSTRUMENTS IN THE EDINBURGH UNIVERSITY COLLECTION
ISBN 0-907635-17-2 他

 イギリスのエジンバラ大學所蔵の歴史樂器目録。樂器毎に分冊。ユーフォニアムの補正ヴァルヴシステムが複數掲載されてゐる。


1851.jpg

MUSICAL INSTRUMENTS in the 1851 EXHIBITION
Peter & Ann Mactaggart, Mac & Me Ltd, 1986
ISBN-0-9507782-6-5

 1851年のロンド萬國博覧會に出品された樂器の目録。ヘルのオイフォニオンや、ゾンマーのゾンメロフォン、サックスのサクソルン・ブルドンについて記載。

 
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2009年04月24日

27年前のバンドジャーナル

 バンドジャーナルが發刊50周年となるやうだ。先日、27年前のバンドジャーナル臨時増刊号を4冊入手した。丁度私がユーフォニアムを吹き始め、吹奏楽に夢中になってゐた頃のものだ。

  adv_bh.jpg
  こんな懐かしい廣告も

 懐かしく讀みつつも、ユーフォニアムの採り上げられ方が、今とは随分違ふといふことに驚いた。このような雑誌は、各樂器が、まんべんなく採り上げられる筈だが、ユーフォニアムの項目がなく、テューバの項目に書かれてゐたり、ユーフォニアム奏者のインタヴューだけがなかったりと、「あぁ、さういへばさうだった」と、當時中學生だった自分の心境を思ひ出した。吹奏樂の雑誌を買っても、ユーフォニアムに關する話題に乏しかったため、やむなく他の樂器の記事も、何かユーフォニアムに生かせるものはないかと、貪るように讀んだものだった。

 雑誌だけではなかった。當時はユーフォニアムの音源も、國内では數枚しか發賣されてはゐなかった。それも、「一枚全部ユーフォニアムのソロ」などといふものではなく、LPレコードにわずか一曲のみ。やむなく、他の曲も貪るやうに聽き、ユーフォニアムが目立ったり重要な役割を担ふ曲(C.カーター、A.リード、F.マクベス、C.ジョヴァンニーニ、A.カウディル、L.フォースブラッドの作品など)は、カセットテープに移し、テープが延び延びになるまで繰り返し聽いたものだった。

 あれから30年近くが過ぎた。吹奏楽や管楽器の雑誌に、ユーフォニアムの話題が載らないことはないし、テューバと同じ項目にされることも、もはやない。大手CDショップの吹奏楽コーナーには、ユーフォニアムのコーナーがあり、インターネットを使へば、内外の素晴らしい演奏の音源を今すぐに入手することも出来る。

 ここまでに至るには、日本のユーフォニアムの地位確立ために、プロユーフォニアム奏者の方々の、筆舌に盡しがたい御苦勞が積み重ねられてきたのだと拜察する。古い雑誌に載ってゐる、今や大御所・中堅のユーフォニアム奏者の方々の、若々しい御表情の寫眞を眺めつつ、感謝の思ひでいっぱいになった。

 勿論、歴史や各國の樂器に對する情報が、十分に得られない状況下(また、歴史への探求が、ある意味「ほどほど」で済んだ状況下)で書かれた記述には、今や明らかに間違ひと認められるものも數多くあるのだが、これを責めたいとは、私は全く思はない。歴史を裁くなど、ジャンケンの後出しのやうなものだ。むしろ、それが今も「正史」「正論」であるかの如く廣まってをり、何か新しい發見があっても、プロアマを問はず受け容れられなくなってゐるやうな怠惰な精神にこそ、問題があると思はれてならない。

 以上のやうなことを思ひながら、僭越ながら、これからの日本のユーフォニアム界は如何にあるべきなのか、といふことに思ひを馳せずにはゐられなかった。

 レパートリーは増えた、聽く機會も増えた、勉強する場も増えた、海外の樂器の情報も掴み易くなった、歴史に關する文献にも辿り着き易くなった。もはや、量を從へて、質に目を向ける時代になったといふことだらうか。

 勿論プロ奏者の仕事内容に、私が口を挟むべきではないのだが、一ユーフォニアム愛好家として、希望を述べるくらゐは許されてもよいのではないかと思ふ。

1.「單に奇麗な音、正確な音程とリズム」に終はらないパフォーマンス。音程がうはずったり、音が荒くなったり、すり切れさうになったりすることも、感情の表現としてコントロールできる、人間的なパフォーマンスの實現。

2.ユーフォニアムの歴史や各國の樂器、樂曲に對する探求と、正確な知識の傳播。見せかけや、勢ひや、縄張り爭ひではない、ユーフォニアムのアイデンティティーの、眞の確立。

 1.は、ユーフォニアムを演奏する奏者(ユーフォニアムを專門に演奏する奏者に限らない)にしか成し得ない大仕事である。2.は、日本では、これまで主にプロのユーフォニアム奏者にその役が求められてきたが、必ずしもさうでなくてはならない、といふ理由は何處にもない。他の奏者であらうが、學者であらうが、アマテュアの愛好家であらうが、樂器を全く知らなかった者であらうが、正確かどうかが問題なのである。「まぁ、人それぞれ考へ方がありますからね」と、生徒や後輩からはぐらかされてゐる御方は、要注意といふことだ。
 
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2009年04月10日

歴史の語り方

 内外のユーフォニアムに關する文献を讀んでゐて、やうやく氣が付いたことがある。

 日本における、ユーフォニアムに關する文献は「○○であった」「○○である」「○○だ」「○○です」と、斷定して書いてゐることが多い。どうも、「先生が生徒に教へる」かのやうな雰圍氣がある。

 一方欧米では、「と考へられる」「○○は、かう言ってゐるが、△△を考へると、さうとは言ひ切れない」「○○の見解は妥当と思はれる」等々、相手の見解を示して、それに賛同するか、賛同しかねるので別の見解を示すなど、相手を想定して、論を進めてゐる。

 これは、恐らく、單なる見かけのスタイルの問題ではなからうと思ふのである。言ひっぱなしで、後は知らんとする者と、常に相手から批判が來るものと想定してかかる者との覺悟の違ひと言ふべきであらうか。

 批判慣れしてゐない者は、批判されるとそれを惡口と勘違ひし、逆上することがあるらしい。「先生」の面目丸つぶれだからだ。結果、他の見解を受け容れることは大事と言ひながら、自分の見解とは異なる見解を無視してかかる。他の意見を批判することもなく、そっぽを向いたやうな文献が多いのはその爲ではないか。それなら、最初から斷定などしない方が、よほど誠實ではないかとも思ふ。
 
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2009年04月09日

ユーフォニアムの年表

 ユーフォニアムに關する年表を作りたいと、以前から考へてゐた。

 何を今更、といふ感がないわけではないのだが、これまで目にしてきた年表の何が氣にくはなかったかといふと、「現代の優れた樂器が生まれてくるまでの歴史」として書かれてゐるところだ。過去は現在のために蓄積されてきた、といふ馬鹿氣た進化論に從ふなら、現在の樂器こそが史上最高の樂器であり、最高の表現をすることが出來ると言ってもよい。それでは、モオツァルトの時代の奏者は、現代よりも表現が劣ってゐたとでも言ふのだらうか。そして、そんな下手くそな奏者を相手に、モオツァルトは音樂を作り出したのか。もっと言ふなら、親父より自分の方が上等なのか。私達の常識は、こんな考へなど否定してかかるだらう。

 また、進化論的に書かれた年表には、「一體どんな形の樂器で、何の曲に使はれたのか」といふ素朴な疑問を、はじめから排除してかかったやうなものが多い。疑問を呈せば「大體このやうなものだったらう」といふ曖昧な返事が歸ってくるのがオチで、それ以上の返答を求めようとすれば、そんな博物館に竝んでゐるやうな樂器のことなど知らなくてもよい、膽心なのは今の樂器についてだ、とでも言ひたげに映じてくる。さういふ態度なら、年表を作るどころか、いっそ歴史などといふ言葉を使はない方がよろしい。

 そこで、他の年表の冩しではなく、文献に記載されてゐる年號を元に、新たに年表を作らうと思ってきたのである。時系列に沿って、國ごとに竝べ、形状の判らない樂器は、形状不明と記載する。わかるものは、畫像をリンクさせたい。さらに樂曲への關りをどのやうにするか、考へてゐる。

 柳田國男氏の「遠野物語」はあまりに有名だが、その序文に、

「國内の山村にして遠野よりさらに物深き處にはまた無數の山神山人の傳説あるべし。願はくはこれを語りて平地人を戰慄せしめよ。」

といふ文章がある。このやうなところは讀み飛ばされて、この書も奇談や未開民族の未発達の思考のサンプルのやうに受け止められてゐるのではあるまいか。しかし、柳田氏が一番語りたかったのは、「平地人を戰慄せしめよ」といふことであり、何より柳田氏が眞っ先に戰慄させられたといふことなのではないかと思ふ。そして、この遠野物語を、神保町の薄暗い露天で買ひ、ガス灯の下で「とどろける胸うち鎮め」つつ讀み耽り、「膝におき つくゑに伏せて 嘆息(なげき)せしことぞ 幾たび」と讀み重ねてきた折口信夫氏もまた、山神山人の生き樣に戰慄させられたのであらう。

 柳田氏の民俗學研究がフィールドワークに基づいてゐるといふのは、誰もが知るところだが、その根底に柳田氏の戰慄があるといふことがわかる人といふのは、どのくらゐゐるのだらうか。フィールドワークが重要なのではない。戰慄したといふ、ナイーヴな感性が重要なのだ。價値は相對的なものと、安穏と決めつけてかかるやうな貧弱な知性には、歴史は感動であるといふ氏の態度は到底感得出來ぬものであらう。序文が讀み飛ばされる理由は、恐らくそこにあるのだらう。

 父や母の古い寫眞を見よ。そこに、胸の奥からわき上がる感動があるなら、それこそが歴史の本當の力であり、姿ではないかと思はれてならない。
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2009年04月03日

ゴッド・ファーザーとフリコルノ

 フリコルノ・バッソで、早速イタリアのマーチなどを練習してゐたら、カミさんが「ゴッド・ファーザーの音樂みたい」と言ってゐました。カミさん、この手の楽器については何の知識もないのに、大分判ってきたみたいです(笑)。素直に嬉しかったですね。

 F.コッポラの「ゴッド・ファーザー(The Godfather)」(1972年)は、大變に凝った映畫で、樂團が登場する場面など、イタリアの場面ではフリコルノが、アメリカではフロントベルのバリトンホーンが使はれてゐたりします。もしかしたら、そこいらの音樂大學の先生の説明より正確なのではないでせうか(笑)。サウンドトラックも聽き應へがあります。特に「ゴッド・ファーザー Part2」がお勧めです。フリコルノ・バッソ(かバリトーノ)のパートも、よく聽こえます。カミさんは、この音色を覺えてゐたのでせうね。

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 ゴッド・ファーザー Part2 の冒頭。1901年のシシリアのコルレオーネ村の葬儀のシーン。フリコルノ・バリトーノかバッソが使はれてゐます。映畫を觀ると、ベルがでかいのがよく判ります(キャプチャーでは判りにくいかも知れませんが、私は現物を持ってゐるので、すぐ判りました)。そして、よく見ると、チンバッソのやうなフォルムのヴァルヴトロンボーンも見えます。

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 1917年のニューヨークの祭りのシーン(復活祭でせうか)。イタリア移民による演奏。フリコルノ・テノーレらしき樂器。そして、

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 同じシーンで、後方にフロントベルのバリトンホーン。

 このあと、主人公のヴィトが、マフィアのファヌッチを殺害するのですが、その間に流れてゐる祭りの音樂からも、バリトーノかバッソそしてバリトンホーンの、明るく、もの悲しく、切ないメロディーが聽こえてきます。

 イタリア+アメリカのスタイルに、ここまで徹底して時代檢證に取り組み、全く違和感もなしに表現するのが藝術なのか! と、度肝を抜かれたシーンですが、一般の人は、そんなこと氣付かないでせう。普通に吹奏樂やってる人だって氣が付かないでせう。さらに、ユーフォニアムに詳しい人だって、ここまで氣付くでせうか。この映畫のどのシーンを切り取っても、哀愁に満ちたポストカードになりさうな、そんな美しく生々しい映畫を創造したコッポラ氏とそのスタッフは、ただ奇麗な映畫を創ったわけではなく、時代や土地に對して、徹底的に調べ上げやうとしてゐたのだ、といふことに氣付かされた次第です。心から敬服しました。
 
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フリコルノ・バリトーノ、バッソ

 MARIO CORSO の 畫像を基にすれば、私の入手した RAMPONE & CAZZANI の樂器は、太さからするとフリコルノ・バッソのやうです。マウスパイプのレシーバーが、トロンボーンの細管シャンクだから「細管」の樂器だとかいふ、トロンボーン奏者に笑はれさうな解釋は致しません(笑)。RAMPONE & CAZZANI の回答が樂しみです。

 さて、入手當初より氣になってゐた、不釣り合ひに大きなベルですが、MARIO CORSO のバリトーノ、バッソ、コントラバッソも、やはりギョッとするくらゐ大きいですね。これは何か意味があるのでせう。

 一つの樂器を手かがりに、色々なことが判ってきますし、色々なことが判らなくなります。しかし、いづれも、その焦點が定まってくるやうに思ひます。漠然と知ってゐたことが、より正確な知識となり、漠然と判らなかったことが、より具體的な疑問になるわけです。

 意固地になって具體性を拒絶する者は、この樂しさと喜びを感ずることは出來ないでせう。學問は感動だといふことを知り得ぬまま、知識の整理のみに忙殺される。なんと哀れではありませんか。
 

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2009年04月02日

イタリアのフリコルノについて その2

 MARIO CORSO 製フリコルノの畫像を見てゐると、事典や文献だけでは不明だった部分がよく見えてくる。つくづく「樂器名」だけではわからないと思ふ。樂器を分類するには、形状と役割の(さながら肉體と精神のやうな)兩面があるのだが、今のところ役割が不明なので、ここでは形状から分類をしてみたい。

 テノーレ、バリトーノ、バッソは、すべてB管だが、それらの違ひは、ボアの太さのやうだ。テノーレからバッソへと太くなっていく。

■ flicorno tenore

 太さからすると、フランス・イギリスのサクソルンバリトンやオーストリアの古いバスフリューゲルホルンに該當するのではないか。トランペットフォームのバスフリューゲルホルンにも近いかも知れない。

■ flicorno baritono

 バリトーノとは言っても、畫像を見る限り、サクソルンの baryton よりもかなり太く、アメリカのバリトンホーンや、ドイツ・オーストリア・チェコなどのテノールホルンに近い太さで、ちょっと見ただけでは、バッソと見分けがつかない。サクソルンにはこれに該當する(basso に對する baritono のやうな)樂器がない。

 レスピーギの交響詩「ローマの松」(1924年)には、tenore と basso の指定はあるが、バリトーノの指定がない。

 ショスタコーヴィチの「黄金時代」(1930年)には、イタリア語で「Baritono」の指定があるが、この樂器をさしてゐるとは考へにくい。なぜなら、ショスタコーヴィチは、この曲に限らず、他の曲においても全樂器をイタリア語で表記してゐるからだ。舊ソ聯の吹奏樂編成からすると、この「Baritono」は、ドイツ系の「Bariton」に該當するのではないかと思ふ。

【参考】
 ショスタコーヴィチとテノールホルン、バリトン
 ソヴィエトの低音金管樂器

■ flicorno basso

 サクソルンバスやドイツ・オーストリア・チェコなどのバリトン、ユーフォニアムに該當する樂器のやうだ。前項のバリトーノより若干太く、樂器としてのフリコルノのバリトーノとバスは、ドイツ系のテノールホルンとバリトンの關係に近いと思はれる。

 面白いのは、これより低いFやE♭の樂器も「basso」であるというところ(この場合、grave と追記される)。そして、basso より低い C管やB♭の樂器になってから、contrabasso となる。サクソルンの場合だと「basse」より低い音域の樂器は、「contrabasse」になる。テューバに關して言へば、ドイツ系の呼稱に近い。

 三國を比較するとかうなる。

 伊 - 獨 - 佛 の順
 basso - Bariton - basse
 basso grave in Mi♭- Baßtuba - contrabasse Mi♭
 contrabasso Si♭ - Kontrabaßtuba - contrabasse Si♭

 この邊が、各國それぞれの樂器や呼稱のややこしいところだが、呼稱は、樂曲における役割が基になってゐることも多いので、研究の上では、ないがしろに出來ないところである。

 インターネットにて、イタリアの樂器店を確認してみると、現在は、このややこしさ(煩はしさ)を回避してゐるのか、basso といふ呼稱は、basso grave の場合にだけ使はれる傾向にある。ユーフォニアムは basso ではなく、baritono として括られるか、または Eufonio と記載されてゐるやうだ。

 フリコルノ・テノーレからフリコルノ・コントラバスまでをボアの太さから分類してみると、ざっとこのやうになるかと思ふ。

flicorni.jpg


 
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2009年04月01日

イタリアのフリコルノについて その1

 イタリアのフリコルノ(flicorno)について、色々調べてゐるのだが、現在も製造を續けてゐるメーカーを見つけたので、掲載したい。

 MARIO CORSO といふイタリアのメーカーでは、各種金管樂器、木管樂器を製造してゐる。同じメーカーで、各種のフリコルノを見られるといふのは、實に有り難い。以下の畫像は、メーカーのサイトからの引用である。これを見ると、このメーカーが、フリコルノのスタイルに、相當厳格に従ってゐるのではないかと思へてくる。サイトに記載の楽器名も、合はせて載せておく。

■ Flicorno Soprano Sib (Bb Flügel Horn)

  flicorno_soprano.jpg


■ Eb Alto Horn (Genis Corno Mib)
  Eb Alto Horn (Genis Verticale Mib)
  Eb Alto Horn (Flicorno Contralto Mib)

  flicorno_contralto01.jpg


■ Eb Alto Horn (Genis Corno Mib)
  Eb Alto Horn (Genis Verticale Mib)
  Eb Alto Horn (Flicorno Contralto Mib)

  flicorno_contralto02.jpg


■ Flicorno Tenore Sib (Bb Tenor Horn)

  flicorno _tenore.jpg


■ Flicorno Baritono Sib Bombardino (Bb Baritone)

  flicorno_baritono.jpg


■ Flicorno Basso Sib Eufonio (Bb Euphonium)

  flicorno_basso.jpg


■ Flicorno Basso Grave Fa (F-Bass Horn)

  flicorno_basso_grave_fa.jpg


■ Flicorno Basso Grave Mib (Eb-Bass Horn)

  flicorno_basso_grave_mib.jpg


■ Flicorno Contrabbasso Sib (BBb Bass Horn)

  flicorno_contrabbasso.jpg


■ Flicorno Contrabbasso Sib (BBb Professional Bass Horn)

  flicorno_contrabbasso02.jpg

 
※ 同社のプライスリストを見ると、各フリコルノには、かなり澤山のモデルがラインナップされてゐる。卵形の樂器などもあるが、畫像で確認できない(外注の可能性あり)。

 
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2009年03月13日

Leonard Falcone レオナルド・ファルコーネ

 アメリカのレオナルド・ファルコーネ氏のシグネチャーモデル・マウスピースを入手した。全部で6本。それぞれ違うカップ形状とボアサイズで、詳細は後日にしたいのだが、どれも見事なVカップだった。

  falcone_mouthpieces.jpg
  あまりのうれしさに祝杯も一緒

 もし現代のユーフォニアム奏者がファルコーネ氏の演奏を聽いたら、どう思ふだらう。恐らく顏をしかめて「古いタイプの演奏」と一笑に付するのではないか。

 かつて三浦徹氏が「音色はかなり明るすぎる感じで、少し固い音なので、個人的にはあまり好きなタイプではありませんが・・・」(「バンドピープル」にて)と表したのも、「これからユーフォニアムのエキスパートを拡大させる」といふ目論見からは、頷ける。

 しかし、カミさんに聽いて貰ったら、「すごーい! ユーフォニアムどうかうぢゃなくて、これっていいよ!」との感想だった。私もさうなのだ。「こりゃユーフォの演奏ぢゃない」と言ふ人はゐるだらうが、それなら、その「ユーフォの演奏」とやらで、ファルコーネのやうに、生き活きと音樂を奏でて、人(ユーフォ人に限らず)に感動を與へられる奏者がゐるだらうか。

 いや、これはユーフォニアム奏者を批判してのものではない。自分は如何に音樂を奏でるかといふことなのだ。ファルコーネ氏の演奏からは、それを感じさせられるのだ。

  falcone01.jpg

 
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2009年02月08日

ユーフォニアムの歴史

 ユーフォニアムの歴史に關する、新しいサイトを作りました。體裁を調整しながら、ぼちぼちやっていきます。徒然草にリンク豫定です。

 ユーフォニアムの歴史 by PROJECT EUPHONIUM

 事典などに名称は載ってゐるけれど、どうも形状が判らない、といった楽器も、出来るだけ画像入りで掲載していきます。何がわかってゐて、何が想像できて、何がわかってゐないのかをはっきりさせ、課題を浮き彫りにしていきたいと思ひます。

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2009年01月07日

ホルスト第一組曲のバリトン

 ホルストさんの「第一組曲」のバリトン(Baritone)パートについては、これまで何度か記載しましたが、また新たな情報です。なんとこのパート譜が入手出來ます! 山野楽器が運營する下記サイトで、ダウンロード販賣してゐるのです。

 楽譜ナウ!
http://www.gakufu-now.jp/

 バリトンパートだけも購入出來ますし、ユーフォニアムパートやフルスコアと一緒に購入も出來ます。ト音記号が苦手な方は、Euphonium-1 といふのが、バリトンパートをヘ音記号にしたものですので、こちらをダウンロードすればOKです。「第二組曲」や、バリテューアンサンブル版も購入出來ます。

 勿論、全パート&フルスコアセット販賣もあります。印刷出來る回數が限られてゐますが、とても奇麗な譜面です。しかもただの樂譜ではありません。なんと、移調や再生も可能なのです。スコアを買って自分のパートだけ音を出さず、カラオケ練習なんてことも出來ます。

 さて、この原典は・・・ 明記されてをりません。しかし、パート編成からして、「ホルストのオリジナル」+「その後に出版された楽譜から數パート」を加へたやうに思はれます。F.フェネル氏やC.マシューズ氏が記した編成表を考へ合はせると、「その後…」のパートを除けば、ホルストさんのオリジナルにかなり近い響きになるのではないかと思はれます。

續きを讀む
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2008年12月31日

年末贅言 その2 ユーフォニアムを語る資格

 先日JETA會員の某氏より、「Wikipedia の ユーフォニアムの項、色々あって大變でしたね」と勞ひのお言葉を頂いた。私が編集に携ってゐたといふことは、サインやプロフィールを見れば判ることなのだが、まさか某氏がその一部始終を見てをられたとは、思ひもしなかった。

 振り返ってみると、私がしたことは、「根據の曖昧なことが、あたかも眞實であるやうな書き方になってゐる」ところについて、資料に鑑みて間違ひがあればそれを削除または訂正したり、根據が不明なら不明と記したり、私が根據をつき止められた場合にはそれを書き加へたりしたことだった。

 當然猛反發を喰らった。たうとう「ユーフォニアムつにいて語る資格がない」と言ってきた者もゐた。そのやうな時、私は「語る資格は一體誰に與へられてゐるのか」と思ひ巡らした。プロの演奏者か? 音大の先生か? 世に名のある學者か? そして「語る資格がない」と他人を攻める者は、「自分には資格がある」と無邪氣に思ってゐる者ではないかとも思った。

 そのやうに思ひ巡らしつつ、やはり私はいつもの結論に行き着くのだった。語る資格のある者、それは「根據を示さうとする者」であり、「ルールを守らうとする者」であらう、と。勝手な、もっともらしい想像は、誰でもする。しかし、根拠を示して一つの見解を示すことは、如何に困難か。無論私がそれを成し遂げてゐるなどとは、とても言へない。だから、私は「貴方には○○の資格がない」などとは、口が裂けても言はないし、言ったことがない。ただ、「貴方も私も、悔しいけれど○○の資格がない」と言ふことはあるかも知れない。
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年末贅言 その1 Wikipedia

 Wikipedia といふサイトは、誰でも(ルールに従えば)編集可能な百科事典サイトで、今や、ある單語を検索にかけると、大抵上位にヒットする。「誰でも編集できる」「いつでも書き換へできる」のだから、當然「内容を鵜呑みにしてはならない」といふ但し書きが必要になるのだが、せっかちな人は、さういふところは讀み飛ばしがちなので、内容を「盲信」するか「無視」するかのどちらかにならう。どちらも困ったものだ。

 このサイトの面白い試みの一つに、これまで全ての編集履歴や編集にあたっての議論(ノート)を讀むことが出來るといふ點がある。信憑性のない記述は、容赦なく書き換へられ、削除される。思ひ込みが激しかったり、意地の惡い編集をする者に出くはすと、編集合戰の樣相を呈してくる。ノートでも激しい應酬がある。しかし、さういふ時にも、論拠を示し、根氣よく編集を續けてゐると、「今のところの見解」として「妥當」なものに落ち着いて來るケースもある。さうしたやりとりが、編集履歴やノートから、よく見えてくる。内容を鵜呑みにしてはならないが、インターネットを通して、互ひに思索していく過程が興味深い。

 もっとも、内容を鵜呑みにしてはならないといふ點については、インターネット上のものであらうが、印刷されたものであらうが、さしたる變りはない。「書き換へが出来る」とか「誰でも編集できる」といふことは、大した問題ではなく、むしろ、何を根據にして如何に語ってゐるか、そこに、書いた人の人となりが現れ出てくることに、もっと注目すべきであらう。結局はどのやうな文献も、「如何に書くか」「如何に讀むか」が肝要であり、それは書く者と讀む者双方の「如何に考へるか」といふ精神的努力が根底になくては、議論にすら行き着かない。さういふことが案外輕んじられてゐると思はれる。
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2008年11月29日

陸軍軍樂隊 日管小バス

 帝國陸軍の、日管製小バス(プチ・バス)を入手しました。皇紀2603年製(昭和18年、西暦1943年)と思はれます。

  04.jpg  02.jpg

 ほぼ同時代(皇紀2604年)の海軍のユーフォニアムは、こちらです。
 http://www.euphstudy.com/myeuph/myeuph02.html
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