2011年10月26日

ドイツの吹奏樂

 Yahoo! 知恵袋でもたびたび出る質問に「吹奏樂とブラスバンドは違ふのか」といったものがあります。

 その回答の中に「ドイツでは吹くことをブラス(blasen)と言ふので、日本で言ふブラスバンドは、そこから來てゐる」といふ趣旨のものがあります。そして、これに對する賛否が、やや激しい形で展開されてゐたりするのですが、そのどれもが全く實情を捉へてゐないので、私の知る得た限りで記載しておかうと思ひます。

 なほ、日本で吹奏樂をブラスバンドと呼んできたことと、ドイツの「blasen」との關係については、私には分かりません。ドイツにおいて「Blasband」といふ呼稱を、聽いたことも見たこともないからです。

 ドイツにおいて、管樂器を中心とした合奏形態、日本で言ふ吹奏樂は Blasmusik と呼ばれ、吹奏樂團は Blasorchester(ブラスオルケスター)といふ総稱がよく使はれてゐます。學術的には色々な分類があるかとは思ひますが、演奏會やCDなどの分類からすると、Blasmusik は、大きく以下の2つのジャンルに分けられると言ってよいかとます。

1. 一般的な Blasmusik(ブラスムジーク)といふジャンル

 Blasmusik と言った場合、一般的には、行進曲、ポルカやワルツなどを中心に演奏する實用的な吹奏樂を指すことが多いやうです。ドイツにおいて、普通吹奏樂と言へば、そのやうなものだといふことを表してゐるのでせう。

 宴會や各種イヴェントで演奏をするプロの樂團、また村の行事(お祭り・結婚式といった宗教行事など)で演奏するアマテュアの樂團がこのジャンルに該當します。このやうな Blasmusik を演奏する「樂團」(Musikanten)を、Blaskapelle(ブラスカペレ)と呼ぶこともあります。コンサートホールでの演奏よりも、屋内外のパーティー会場、ビアホール、教會での演奏、行進による演奏などが多いやうです。

 小編成はクラリネット、フリューゲルホルン(トランペット)、テューバ(フロントベルのユーフォニアムや、ドイツ式バリトンなども)に、アコーディオン、ドラムなど5人から10人以内が多いです。小さい酒場やパーティーでの演奏が多く、編成のフレキシブルな樂譜が使はれます。

 中編成となりますと、フルート、クラリネット、フリューゲルホルン、トランペット、ドイツ式のテノールホルン・バリトン、Fバステューバ、Bコントラバステューバ、ドラムと、15〜25人ぐらゐです。華やかな演奏効果を求めつつも人数を絞ったプロのBlasmusikはこの規模が多いです(ギャラの都合もありますので)。

 大編成は、中編成にサキソフォン、ホルン、トロンボーン、パーカッションなどが加はります。村の吹奏樂團(編成を限定せず、コミュニティー重視)などに見られます。

2. Sinfonische Blasorchester(シンフォニッシェ・ブラスオルケスター)といふジャンル

 一方、一般の Blasmusik とは一線を畫し、各國の吹奏樂のオリジナル曲やオーケストラ等の作品を編曲したものなど、藝術性を追求した演奏を中心にする吹奏樂團を指して、Sinfonische Blasorchester といふ呼稱があります。

 オーケストラに附屬の吹奏樂團、音樂大學など専門教育現場における吹奏樂團、放送協會などのプロ吹奏樂團、藝術志向のアマテュア吹奏樂團(専門教育修了者も在籍)などが該當し、主にコンサートホールで演奏します。

 軍や警察の樂隊(Musikkorps)は、軍樂の演奏の他、一般の Blasmusik 的な演奏任務もありますが、コンサートホールでは、主に Sinfonische Blasorchester 志向で任務を行ひます。

 編成や各樂器の役割は、日本の吹奏樂團とほとんど變りありません。Blasmusikと同じく、一般的にはコルネットではなくフリューゲルホルン、ユーフォニアムではなくドイツ式のテノールホルンとバリトンが使はれ、樂曲もその編成で書かれてゐます。近年の國際吹奏樂コンクールなどの影響か、コルネットやユーフォニアムで演奏する樂團もあります。
 
 このやうに Blasorchester による Blasmusik は、音樂の役割によって、一般の Blasmusik と、藝術性を追求した Sinfoische Blasorchester とに呼び分けられるのが實情のやうです。もっとも、使用される樂器はほぼ同じですので、日本と同じく、志向を限定せずに、時と場合によって Blasmusik と Sinfonische Blasorchester の兩ジャンルを演奏してゐる樂團も、アマテュアにはあるやうです。

 しかし、プロの場合は、仕事ですからスタイルを重視しますので、Blasmusik の樂團が Sinfonische Blasorchester で興行を打つことはないと思はれます。所属メンバーが、それぞれの樂團で仕事をすることは、もちろんあり得ます。ただ、どうもプロの Blasmusik には、スタジオプレーヤーが多いやうで、別の日には Sinfonische Blasorchester といった藝術分野ではなく、ジャズのビッグバンドなどの仕事をしてゐるやうです。そんなところにも、兩者の畑の違ひが垣間見られます。
 
 先にも書きましたとほり、これらは演奏會やCDなどの分類に基づいた私の見解ですので、學術的にはもっと色々な分類があり、より細分化することも出來るかと思ひます。

 余談ですが、ドイツ人が、日本の吹奏樂團(50人規模)を「Big Band」と稱したといふお話をネット上で見ました。おそらくは「Großes Blasorchester」(ドイツにおいて60人程度の大規模な吹奏樂團を指す)を英譯したのでせう。もちろんジャズのビッグバンドとは別の意味合ひだと思はれます。

 ドイツの Blasorchester を規模で分けますと

 Kleine Harmoniemusik(25人程度)
 Mittleres Blasorchester(40人程度)
 Großes Blasorchester(60人程度)

となるやうです(参考:Handbuch der Blasmusik, Hans-Walter Berg 他著, Schott, 2004)。
 


Copyright(C) 2011 岡山(HIDEっち) (PROJECT EUPHONUM http://euphonium.biz/) All rights reserved. 文章・画像の無断転載厳禁 | Posted at Oct.26 23:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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