その方から質問。「マーラーの交響曲第7番のTenorhornって本当はどんな楽器なのか」
以前に演奏したさうで、そのときはユーフォニアムが使はれたらしく、どうもイメージが違ふと思ってゐたのこと。金管楽器奏者に訊いても、不明瞭な回答だったり、自信満々で矛盾した回答をしてゐたりして、要領を得なかったさうだ。
そこで、マーラーのテノールホルン(テナーホルン)は、実際にドイツ、オーストリア、チェコなどの吹奏楽で使はれてゐる金管楽器であること、ユーフォニアムよりも輪郭のハッキリとした音色であることを話した。
その方は、やや驚いた表情で、「今までの疑問がすべて氷解した」とご満悦の様子。
そして続けて「なぜ、みんなこの質問に答へられないのか」とのこと。これは応へに窮してしまった。
ともかくは、この手の中低音金管楽器は、国や地域によって違ふ楽器が開発されてゐて、役割は同じやうなものだが、それぞれ微妙に響きが異なること、そしてそれらの一つ一つをちゃんと聴いたり演奏した経験を持った人がほとんどゐないといふことを話した。
その方は「自分達の楽器のことなのに、なぜ金管奏者は・・・」と、やや軽蔑の色をにじませてゐた。
自分の担当する楽器についての正しい知識を探求するのは、ごく当たり前のこと。専門の教育を受けてきて、プロとして飯を食ってゐるにも関はらず、それを知らないといふのは、どうやら軽蔑の対象にさへなりかねないやうだ。この方も同業者であるからこそ、憂いてゐたのかも知れない。
さて、ドイツ方面の音楽大学にはユーフォニアム等、この手の楽器の専攻がないと聞いてゐる。その為、日本でユーフォニアムを専攻した学生が、彼の地に留学するケースといふのは、かなり少ないのではないかと想像する。この手の楽器が活躍するレパートリーを生んだ地で学ぶ機会を失ってゐるといふことも、わが国でドイツ系の中低音金管楽器に関する不正確な知識がはびこってゐる外的要因なのかもしれない。
それなら、ハンデがある分、より詳しく、正確に知らうと努めなければならない。数少ない、貴重なレパートリーであるなら、なほさらだ。それはマニアックとかオタクとか、軽蔑されるやうなことでは決してない。むしろ知らないことの方がよほど軽蔑の対象であるといふことを、この方とのやり取りで感じた次第。そして、これをどう読むかは、貴方次第。
【ユーフォニアムの歴史と研究の最新記事】
やはり何か違うような気がして…