2009年11月14日

york と Besson のユーフォニアム

 Besson の BE967-2 Sovereign の新しいモデル(ドイツの旧工場製なので、刻印は Made in England とある)が入荷しました。丁度良い機会なので、york の YO-EU3067-2 Preference と比較してみました。

 york_besson.jpg

 yorkの方は、オプションでトリガーと金メッキパーツが着けてありますので、それは見逃していただくとして。いかがでしょう。もうほとんど「同じ」に見えます(まぁこのソヴェリンの場合、工場も一緒ですし)。違うところは、支柱の形状や細かいパーツの形状や装飾の部分ですね。フォルムとしては同じと言ってよいかと思います。

 よく「コンペならどのユーフォも同じ形じゃないか」と言う方がいらっしゃいますが、やはり並べてみるとフォルムが異なるものです。鋭い方なら直感的にそれが違って見えるでしょう。しかし、york とBesoon は、細部が異なるものの、フォルムが同じなのです(Sterling すら違って見える程です)。

 肝心の音色ですが、両者を吹き比べてみますと、ベッソンの方が濃い感じです。ヨークは少しあっさり目。例えて言うなら、普通のコーヒーとアメリカンコーヒーのようで、コーヒーに変わりはないという感じです。

【付記】

 york も Besson もマウスパイプがフローティングなのですが、york の方は Besson の Prestige のように、ベルとの間に支柱が入っています。Besson の Sovereign にはこの支柱がありません。また、Besson の方のメインテューニングスライドには支柱がありません。この辺が音色に関係しているのではないかと思われます。

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2009年11月10日

ドイツ製のベッソン・ソヴェリン

 現行のベッソンはドイツで製造されてゐるのだが、具體的にどう違ふのか、興味がある方も多いのではないかと思ふ。

 手元のカタログを見ると、ベッソンは

 2002年まで Buffet Crampon
 2003年から The Music Group(含むBuffet Crampon)
 2006年から Buffet Crampon

と、經營母體が變ってきた(これ以前もあちこちに變ってゐたのだが、それは、この項ではひとまづ置いておく)。

 私がモデルの變化に「おや?」と気づいたのは2005年のカタログの畫像を見てからだ。當時、ベッソンの工場がドイツに移るとかいふ噂があり、どうやら、同じ「The Music Group」の「Keilwerth」(ドイツのメーカーで、サクソフォーンが有名。現在は york のユーフォニアムを手がけてゐる)の手によるものだとのことだった。

 そして、The Music Group が倒産し、再び Buffet Crampon の傘下として BESSON ブランドの各モデルは開發が續けられてゐる。現在は、Keilwerth を離れ、どうやらドイツのJAグループ(農協ではなく、マルクノイキルヒェンの各メーカー、WENZEL MEINL や B&S で有名)で製造されてゐるやうだ。

 先にも書いたやうに、まづ「おや?」と思ったのが、全體のフォルムだった。特にこの部分左が Keilwerth で製造されたBE967-2、右がイギリスメイドの967GS-2。

  round.jpg

 ピストンのボタンや、右手のサムレスト・パイプの形状は置いておくとして、黄色い○の中を注目していただきたい。かつてのベッソンは、上方向に向かって、幅が狭くなるようなレイアウトであり、この形状がウィルソンやヤマハとは異なるものであった。しかし、ドイツ製になってから、この部分が、他社と同様の平行に近いデザインになってゐる。かつてのこの柔らかいラインこそ、ベッソンの美しいフォルムを形成してゐると思ふにつけ、残念である。

 また、いつの間にかボアサイズが變化してゐたことに、お氣づきだったらうか? カタログスペックでは、2007に至っても、14.72mm/第4ヴァルヴ16.52mmなのだが、最新のカタログでは15.00mm/第4ヴァルヴ17.00mmとなってゐる。

 上記畫像のBE967-2は、2005年か2006年のもの(既にドイツで製造してゐるが、刻印は Made in England)で、カタログには 14.72mm/16.52mm と記されてゐるが、實際は15.00mm/17.00mmである。

 日本のビュッフェ・クランポンのサーヴィスセンターによれば、ドイツ製になってから、材料の合理化が圖られ、汎用のサイズが採用されたのだと言ふ。

 またベルサイズも、カタログには304.8mmと一貫して記載されてゐるが、上記967GS-2の實寸は310mm、BE967-2は307mmであった。

 他、第1ヴァルヴのコンペ管が、固定され、抜差が出來なくなってゐたり、メインテューニングスライドの支柱がなくなったりなど、色々工夫がされてゐる。

  compe_1st.jpg  mainslide.jpg

 デザインの變更や材料の合理化によって、ピッチのコントロールがしやすくなったり、より豊かな音で演奏することが樂になったりと、メリットも大きい。見方を變へれば、通常より多くのコストと手間暇をかけて、わざわざ鳴らしにくくコントロールの困難な樂器を製造して販賣することは困難なのだらう。

 致し方ないことだが、寂しくもある。私が Besson の新しいモデルを使はず、york を選んだ理由も、york なら別ブランドなので、違和感なく受け容れられた、ということなのかも知れない。
 
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2009年11月05日

「カラー図解 楽器から見る吹奏楽の世界」發刊

 待望の佐伯茂樹氏による新しい吹奏樂の本が、河出書房新社より出版されました。

  suisougakunosekai.jpg
  カラー図解 楽器から見る吹奏楽の世界 ← クリックで注文できます。

 これまで「樂器」「樂曲」「編成」は、別々の文献に頼らなければならなかったのですが、どうもそれらの整合性がなく、てんでに勝手な見解を書いたり、アドヴァイザーの意見を鵜呑みにしてゐるやうな書が多かったやうに思ひます。

 この本は、佐伯氏一人で書かれたもので、巷によくあるやうな「著者は一人、アドヴァイザーは樂器の數」といふ本とは違ひ、主張が一貫してゐるので、資料として大變貴重だと思ひました。このやうな本は、これまでありさうでなかったですね。

 一見似たやうな本が、次々に刊行されてをりますが、どれも「正確さ」に欠けてゐるものばかりといふ印象でした。これからも、その傾向に變りはないと思ひます。こんな状況だからこそ、佐伯氏の本のやうな「質」が大事だと思ひます。

 このやうな畫期的な本に、私の所有する樂器を、資料として多數掲載していただけたことを光榮に思ってをります。

 表紙にサテンシルバーのユーフォニアムが載ってゐる本など、なかなかないですよね(このやうな調子で、マニア心をくすぐる一冊でもあります)。
 
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2009年11月04日

中共のユーフォニアムの歴史 その2

 ところが、近年は、ロータリー式の樂器を用ゐず、ユーフォニアムが用ゐられてるやうである。

 本年(平成21年 西暦2009年)は、中共建國60周年にあたり、國家元首を前に、全軍が集結する大閲兵が執り行はれた。その模様の映像資料を見ると、陸海空の全軍でユーフォニアムが使用されてゐるのが確認できる(2枚目の鮮明な映像資料を手配中)。

  2009.png  2009-02.png
  「建国六十周年 共和国十四次大閲兵」(2009年 CCTV中国中央電視台製作)

 マウスパイプの形状からして、YAMAHA YEP-642を元にした、中共製の樂器のやうに見える。

 1949年の第一次大閲兵から辿ってみると、ピストン式からロータリー式、そしてピストン式へと移り變ってきたことが確認できる。

  1949-01.png  1949-02.png
  1949年の映像から
 「共和国歴次大閲兵」2005年 中国人民解放軍映像出版社

  1955.png
  1955年(第一次臺灣海峡危機當時)の映像から
 「共和国歴次大閲兵」2005年 中国人民解放軍映像出版社

 以上の資料ではピストン式のユーフォニアムやバリトン、アルトホルンなどが採用されてゐたことが確認できる。

 なほ、この後の1956年(中ソ對立の發端となった、ソ聯共産党黨第20回大會が開催された年)の第八次大閲兵では、中低音樂器については映像確認できないが、ロータリー式のトランペットが採用されてゐることが確認できた。

 前回(1999年)の第十三次大閲兵では、ロータリー式のテノールホルン、或はドイツ式バリトンと見られる樂器が用ゐられてゐるのが、確認できる。

  1999.png
  1999年 第十三次大閲兵の映像から
 「世紀大閲兵」2001年 中国三環音像社

 未だ詳細は不明だが、ざっと、このやうな動きがあったのではないかと推察してゐる。

【建國當初の1949年〜1955年】ピストン式の円錐管同族樂器が採用され、次中音號(バリトン)、上低音號(小バス・ユーフォニアム)が用ゐられた。

【1956年以降、極く近年まで】ロータリー式の樂器が採用され、次中音號(テノールホルン)、上低音號(ドイツ式バリトン)が用ゐられた。

【2009年現在】次中音號に相當する樂器はなくなり、上低音號としてユーフォニアムが採用された。
 
 今後もさらなる情報を得たい。

 なほ、蒋介石の國民黨軍による中華民國(臺灣)については、中共とは別の政府により建國された國であり(日本政府は「國家」としては認めてゐない)、軍組織も異なるため、吹奏樂の編成も、別の道を辿ってきたものと思はれる。
 
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中共のユーフォニアムの歴史 その1

 中華人民共和國(中華民國臺灣ではなく、毛沢東により1949年に打ち立てられた共産主義國家。以下「中共」と記す)のユーフォニアムについて、觸れてみたい。

  china_euphonium04.jpg
  比長安編著「次中音号上低音号演奏実用教程」(2001年 中国青年出版社)

 ユーフォニアムの名稱は「上低音號」で、日本で言ふところの「小バス」に近いニュアンスである。ピストン式(ユーフォニアム)、ロータリー式(ドイツ式バリトン)による名稱の區別はない。

 なほ、サクソルン式のバリトンについては「次中音號」と稱されてゐる。これもピストン式(バリトン)、ロータリー式(テノールホルン)による名稱の區別はない。

 上海音樂學校近邊の樂譜店で、教則本を探したところ、次の二冊が見つかった。いづれも、中國人民解放軍軍樂團の教官が記したもののやうである。

  china_euphonium01.jpg
  比長安編著「次中音号上低音号演奏実用教程」(2001年 中国青年出版社)

  china_euphonium02.jpg  china_euphonium03.jpg
  姜永強編著「次中音号初級教程」(2002年 同心出版社)

 上低音號、次中音號共通の教則本が用ゐられてをり、記譜はin B♭のト音記號である。なほ、兩者の寫眞を見ると、使用の樂器が中共製ではなく、ミラフォンのドイツ式バリトン(ロータリーヴァルヴ)のやうだ。
 
posted by 岡山(HIDEっち) at 01:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | ユーフォニアムの歴史と研究